2021年10月博多駅構内の西13出入口下部トイレが封鎖されていました。近づくと、南京錠がされた囲いとともに「建築物等の解体等の作業に関するお知らせ」「石綿の使用状況の調査結果」と書かれている張り紙が2枚貼られていました。
石綿(アスベスト)が人体に与える影響と問題点
アスベストを吸引すると一部の物質が肺に留まり肺がんを引き起こす可能性があることが知られています。一時期はニュースで持ちきりになるほど話題になりました。
日本では昭和30年頃から保温断熱の目的でビルなどを建築する際に石綿の吹き付けが一般化されていましたが、昭和50年に石綿の使用が原則禁止とされました。
その後も大気汚染防止法などの法改正が進み、解体工事時にアスベストの飛散を防ぐための対策や罰則、都道府県への報告義務が追加されるなど、令和に入って新たに施行されるものもあります。
ここ最近のアスベスト関連の話題といえば、ニトリなどで販売されていたコースターやバスマットなど水回りで使用する一部の珪藻土製品に、法令の基準を超える石綿(アスベスト)が含まれていたとして自主回収が実施されたことでしょう。珪藻土を用いた商品は吸収性や速乾性に優れていることからここ数年で流行っていた商品でした。
日本が輸入しているあらゆる商品は中国製であることが多いですが、中国ではアスベストの規制が日本のように厳しくないため、輸入された製品からアスベストが検出されるということがまれに起こってしまうようです。
2021年10月博多駅で石綿(アスベスト)が検出された
博多駅といえば、福岡県の中で1日の利用者が1番多い駅です。その数は東京都の代々木上原駅や上野駅と肩を並べるほどです。
そんな利用者が多い博多駅で石綿(アスベスト)が検出されたにも関わらず、一文字もニュースやネット記事で目にすることはありませんでした。
そもそも石綿の使用状況を調査することになった発端は、博多駅と天神南駅を繋げる福岡市地下鉄の七隈線延伸事業「福岡市地下鉄七隈線博多駅(仮称)建築工事」のようです。
張り紙に記載してあった内容の一部を文字に起こしてみました。
建築物等の解体等の作業に関するお知らせ
調査方法の概要
切削して採取し、含有分析を実施(西13出入口下部トイレ)調査結果
✓特定工事に該当しませんが、その他石綿の使用状況は以下の通りです。
天井石膏ボード(レベル3)(石綿粉じんの飛散防止対策の内容)
博多駅構内の張り紙(2021年10月29日時点)
仮囲いに目貼りを実施し、外部への流出を防止
石綿の使用状況の調査結果
調査方法
✓石綿含有率の分析
・調査個所
西13出入口下部トイレ調査結果
博多駅構内の張り紙(2021年10月29日時点)
石綿含有 ✓有り
天井、石膏ボード、Chr(0.1-0.5%), Amo(5-50%)
この張り紙を見て気になったのが「レベル3」「Chr(0.1-0.5%), Amo(5-50%)」の文字です。どの程度のアスベストが含まれているのかが分かる指標なのではないかと思い調べてみました。
レベル3とは
「レベル3」とは、建築物の解体などをする際に扱う石綿(アスベスト)の発じん性(飛散性)に応じて指定される建材レベルの1つです。レベル1、レベル2、レベル3に分けられた建材レベルに応じて作業基準が定められています。
レベル1が著しく発じん性が高いのに対して、「レベル3」はレベル1とレベル2に比べると発じん性が低く危険性が少ないと言えます。
Chr(0.1-0.5%), Amo(5-50%)の意味とは
「Chr」はクリソタイル、「Amo」はアモサイトというアスベストの一種である物質のことを指します。繊維状を呈している両物質は日本における法令の規制対象となります。
「Chr(0.1-0.5%)」は調査した建材にクリソタイルが0.1%~0.5%含まれていたことを指し、「Amo(5-50%)」はアモサイトが5~50%含まれていたという意味であると取ることができます。
アスベストが建材から0.1重量パーセントを超えると、アスベストが含まれた建材であると定義されます。
博多駅の石綿(アスベスト)検出が話題にならなかった理由
2021年に博多駅で石綿(アスベスト)が検出されましたが、張り紙の内容を調べてみるとアスベストの飛散性が比較的低いため、作業基準に則った作業をしてくれれば心配する必要はなさそうな内容であることがわかりました。
2021年の4月に改正された法律が施行されてから1年も経っていませんでしたが、法律に沿った対応をしてくれているようで安心しました。
その後現場には、アスベストに関する内容の張り紙から、博多駅(博多口)の工事に関するお知らせに変わっていました。予定では2年ほど工事が続くようです。